「Bitcoin Pizza Day」その由来と後日談

Bitcoin

毎年5月22日は、Bitcoin(ビットコイン)にとって記念すべき日です。それは2010年の5月22日に、世界で初めてビットコインで2枚のピザが購入された記念すべき初取引(決済)が行われた日なのです。

その後、このエピソードはビットコイン界隈では有名な話になり、今ではこの5月22日を「Bitcoin Pizza Day(ビットコインピザの日)」と呼ぶようになりました。2020年5月22日には、記念すべき10周年を迎え、2021年は11周年。それでは、Bitcoin Pizza Dayを改めて振り返ってみたいと思います。

きっかけは掲示板

ビットコインは、正体不明の謎の人物サトシ・ナカモトが原論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」を発表した2008年を創世記とし、論文に感化された開発者グループとともにサトシ・ナカモトが、「Proof of Work chain」上で機能する仮想通貨ビットコインを誕生させたのが始まりです。

それから1年、ビットコインと法定通貨の取引ができるマーケット、いわゆる暗号資産取引所「New Liberty Standard」が設立されたのが2010年2月だといいます。取引所が示した初のビットコイン価格は、1ドル1,309.03BTC、1BTCが0.0076セント相当でした。この価格は、当時のビットコインのマイニングにかかった電気料金から算出されたといいます。この頃は、ほぼ開発者グループやエンジニアの間でしか取引が行われていなかったといいます。

そして時は2010年の5月18日、Bitcoin Forum(bitcointalk)の掲示板にプログラマーのLaszlo Hanyecz(ラズロー・ヘニエイツ)氏が「誰か1万BTCでピザを2枚、売ってくれないか?」と書き込みをしたのをきっかけに、ビットコインによる世界初の記念すべき決済取引へと進むのでした。

掲示板への書き込みに対するコメントは、書き込み後から3日間、ほとんど売買とは無関係な内容ばかりが書き込まれ、これといった進展はありませんでした。

掲示板への最初の書き込みは、ラズロー氏はどこに住んでいるのか? という質問でした。質問に対してラズロー氏は、「米国フロリダ州、ジャクソンビル」と答えています。

その後、掲示板には「1万BTCあれば、ビットコインマーケットで、今なら41ドルで売れるよ。タダでピザが手に入るといいね」というコメントや、「自分はヨーロッパに住んでいるが、国外から支払う方法(クレジットカード等で)を教えてくれればドミノピザを購入するよ」といった親切なアドバイスが書き込まれました。

それに対してラズロー氏は、「ピザ屋はだいたいオンラインで注文できるよ。うちはよくPapa John’sで注文する。支払いは電話でもクレジットカードが使用できるよ」と返答しています。

この時点で、当時の1万BTCは41ドルの価値があったことがわかります。つまり1BTCは、わずか0.4セントだったことになります。

それから「美容室でピザを食べられるところを知りませんか?」という書き込みを最後に、掲示板へのコメントの書き込みは音沙汰なしとなり、それにしびれを切らしたLaszlo氏が、3日目(5月21日)に「誰も自分のためにピザを購入したくないの? 1万BTCでは安すぎますか?」と書き込みました。

すると、すぐに「国外だけど、もし誰も購入する人がいなければ自分が購入してもいい。とりあえずオンラインで購入する方法を調べます」といってくれる人が現れました。その人がラズロー氏に「今、お腹すいているの? それともピザが好きなの?」と問いかけると、ラズロー氏氏は「(そうではなく)ピザの代金をビットコインで支払ったといえたら面白いよね」と答えています。

そうしたやり取りが続いた中、2010年5月22日午後7時17分、ついにラズロー氏は掲示板にピザ2枚と1万BTCの取引に成功したことを報告しまた。掲示板には、その時のピザの写真とピザを購入してくれた「jercosに感謝!」というコメントが書き込まれました。

“I just want to report that I successfully traded 10,000 bitcoins for pizza. Thanks jercos!”

これが記念すべき、ビットコインで2枚のピザが購入された初売買の成立の日です。

余談ですが、このときの写真から、取引が行われたピザは「Papa John’s」のトマトとチーズ、サラミがトッピングされたLサイズのピザ2枚だったようです(ピザの名前は不明)。

取引成立の流れ

1万BTCとピザ2枚を交換してくれたJeremy Sturdivant(Jercos:ジェレミー・スターディヴァント)氏は、実際にはジェレミー氏が自費でピザを注文し、届け先をラズロー氏宅に指定し宅配を依頼しています。自宅でピザを受け取ったラズロー氏は、その後にジェレミー氏に1万BTCを支払いました。ちなみにピザの価格は、2枚で約25ドルだったようです。

・1万BTCを送信した当時のトランザクション
Block Height(ブロック番号)57043 2010-05-23 03:16
https://www.blockchain.com/btc/tx/a1075db55d416d3ca199f55b6084e2115b9345e16c5cf302fc80e9d5fbf5d48d

送信アドレス
1XPTgDRhN8RFnzniWCddobD9iKZatrvH4

受信アドレス
17SkEw2md5avVNyYgj6RiXuQKNwkXaxFyQ

その後の話

ラズロー氏は、その後もビットコインでピザの購入を掲示板にてオープンオファーとして続けました。6月12日の掲示板の書き込みでは、「資金が続く限り、いつでも1万BTCでピザ2枚を購入します。ピザは25ドル程度なので、交換を行う人に有利です」とコメントしています。オープンオファーは、その後約3か月続いたといいます。

しかし、ビットコインの価値は徐々に上昇し、また、日々ピザのためにマイニングをすることがしんどくなったラズロー氏は、ついに8月4日に根を上げ、1日に何千ものコインを生成することはできないので、オープンオファーを続ける余裕がなくなったと掲示板に書き込み、ビットコイン1万BTCとピザの交換は、事実上、終了になりました。終了時、1万BTCは500ドル前後の価値になっていました。わずか3か月で、2枚500ドルのピザを食べていることになってしまったんです。

ちなみに現在のビットコインの価格に換算すると、ピザ2枚の価格は5億ドル(1BTC=5万ドル)、日本円にして544億円相当になります(2021年5月15日現在)。

後日談

1万BTCで2枚のピザを購入したラズロー氏に対して、その後ニューヨーク・タイムズが2013年にインタビューを行い、「結果、高額なピザを購入したことになったが後悔はないか」という質問を投げました。その問いに対しラズロー氏は「当時はビットコインに価値があったわけではなかったので、それらをピザと交換するということ自体が信じられないほどクールだった」と述べ、「ビットコインの価値がこれほど大きくなるとは誰も予測できませんでした」と当時を語っています。

ニューヨーク・タイムズインタビュー「Disruptions: Betting on a Coin With No Realm」
https://bits.blogs.nytimes.com/2013/12/22/disruptions-betting-on-bitcoin/

実際の流れはIRCチャットで

これらの一連のエピソードは、今もBitcoin Forum(bitcointalk)の掲示板にしっかりとログが残っているんですが、実際に取引を行ったジェレミー氏とのやり取りが、実は一切掲示板にはありません。ただ結果として、ラズロー氏の取引成立の書き込みが残るのみです。

それは、ラズロー氏とのやり取りは、実際はIRCチャットにて行われたことをジェレミー氏が後日、ビットコインWho’s WhoというWebサイトでのインタビュー中に証言しています(2015年)。ジェレミー氏は、ラズロー氏が1万BTCとピザ2枚を交換したがっていることもIRCチャット上で知ったといっています。

購入されたピザは、Papa John’sではなくドミノピザであるという記事もよく見受けられます。というのも、ビットコインwikiの「Laszlo Hanyecz」の項目には、交換したのはドミノピザ2枚と書かれているからです。しかし、写真はPapa John’sのピザという矛盾が生じています。

これについては、ジェレミー氏の記憶では購入したのはドミノピザだったのではないかという発言に由来しているようです。ジェレミー氏は、上記インタビュー内で、ドミノピザ(特定のWebインターフェースまで)で購入したことをはっきりと覚えています。しかし、写真はPapa John’sのピザだとし、今では、チャットログを記録していなかったことを後悔し始めています、と述べています。

Bitcoin Forum 掲示板
https://bitcointalk.org/index.php?topic=137.0

ビットコインWho’s Who インタビュー「A Living Currency」https://bitcoinwhoswho.com/index/jercosinterview

最後に

今となっては、真相は藪の中ですが、当時の様子としてラズロー氏がアップしたPapa John’sピザの写真は、今もなお閲覧可能になっていることから、ピザはPapa John’sであったことが有力説となっているようです。

・写真URL
http://heliacal.net/~solar/bitcoin/pizza/

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